コロナ逡巡日記⑤ (3月23日~3月29日):外出制限の日々が続く
(本稿は、コロナ逡巡日記④の続きです)
職場のリモートワーク環境が整ってきた。
わがセクションでは、各課員が毎朝メッセンジャーアプリSignalで生存報告を兼ねた挨拶をする決まりがある(SignalはMessengerやWhatsAppよりもセキュリティが堅牢との由)。
オンライン会議は、Skypeのときもあれば、Webexのときもある(Zoomもポピュラーだったが、数日後に情報漏洩リスクが報道されてから、私の周辺では下火になった)。いずれも便利だし、「上半身はジャケット」「下半身は短パン」という合成獣みたいな格好でも通用するのがおもしろい。ささやかな背徳感がスパイスになる。
懸念された子どもの闖入リスクは、カメラをOFFにしたり、「非発言時はマイクをミュートにして雑音を抑えるマナー」のおかげで、それほど心配のないことがわかった。まあ、闖入したら闖入したで、ご愛敬で済む話ではあるけれど。
ANAの直行便がついにお休みとなる。友人のEさんは来月初旬の帰任予定だったが、あわてて前倒しでチケットを取っていた。
飛行機に関しては、ひとつ朗報があった。Wizz Airから連絡があって、予約済みのチケットが返金可能とわかったのだ。
Wizz Airから提示されたオプションは、「①購入額120%相当のWizz Airポイント(2年で失効)」または「②100%相当の現金」の2つ。すばらしい。LCC(格安航空会社)にしては親切すぎるくらいだ。
すこし悩んで、「②」を選ぶ。なぜなら、今夏にはウィーンでの任期が満了し、次の勤務地はおそらく東京であるから。
2018年1月1日に開始した拙ブログも、いよいよ最終コーナーにさしかかってきた。
ウィーンから日本への引っ越し準備を進める。私の所属する国際機関が費用を負担してくれるのはありがたいが、最低3社から相見積もりをする必要がある。その候補も担当部署が指定するので、こちらが日通を選んだりはできない。
コロナウィルスの影響で見積もり作業の実現可能性が懸念されたが、どの会社もWhatsAppなどのリモートで対応可能との由。なるほど、テキストと音声と画像と動画がシェアできれば、対面をせずとも物事は進む。
これと同じような発想で、日本の不動産屋さんで「リモート内覧」とか「大家さんとのリモート面談」とかに対応してくれるところがあれば、これは海外居住者の潜在ニーズを大いに満たすのではないか。
いや、日本の不動産業界がコンサバティブであるのは承知しているが、そうであればこそ、こういったサービス付与で一気に差別化できるようにも思う。どこかに意欲的な業者はいらっしゃらないものか。
子どもたちの自宅待機も早や2週間である。
3歳児が通う幼稚園は、厳密には閉鎖していないのだが、保護者に対して「どうしても家に留めおけない事情がある場合のみ登校可」のお触れがあり、ここまでずっと「登校者ゼロ」の状態を保っている。
6歳児が通う小学校は、政府要請により公式に閉鎖中。「いまのところ学校関係者の感染はゼロ」との連絡がある。(私の職場ビルからは6名の感染者が出ている)
小学校からはiPadと「自習キット」が支給されて、平日にオンラインで課題が届く。Seesawというアプリを通じて提出するのだが、これがなかなかに侮れない。
たとえば、「表面張力」の回では、
オンライン学習とはどういうものか、はじめて実感できたような気がする。
今週ぶんの仕事を大過なく終え、ボスニア・ヘルツェゴヴィナの記事も脱稿した。よし。YouTubeばかり見ている息子たちを、買い物ついでに外出させる頃合いだ。
「行き先を決めずに電車に乗る」とは拙ブログ初期の記事名だが、最近そのインセンティブが増している。原点回帰というべきか。
この日は路面電車71番に乗って、40分くらいかけて終点のKaiserebersdorf駅に行く。目的みたいなものは何もない。いつもと変わらぬスタイルだ。
つげ義春の漫画をひさしぶりに読みたくなる。でもウィーンにはない。悲しい。
携帯電話からWhatsAppの通知が鳴りやまない。これは、どういうことか。
いつのまにか、ブードゥー・ジャズのグループに入れられていたのだ。
今年の初めに関係者から連絡を受けたことはあるけれど、それだけのご縁で、まさかいきなりインナー・グループに組み入れられるとは思わなかった。現在57人のグループで、私以外の参加者は全員が黒人である。次回の演奏会のロジスティクスなどのやり取りが、フランス語でスピーディーに進められていく。
さらには、これはWhatsAppの設定のせいだろうか、私の携帯電話にすごい勢いで参加者の自撮り画像みたいなのが溜まっていく。端的に言って、わけのわからない状況である。
画像のなかには、マスクを着用している姿もあった。ベナン共和国にも、コロナウィルスの影響が及んでいるのだ。
子どもたちと路面電車2番に乗って、終点のDornbach駅に行く。
風通しのよいウィーンの郊外。ここも初めて降りる場所である。
犬の散歩をたのしむ人もあり、子どもたちと遊ぶ家族もあり、各々が気ままに晴天の吉日をたのしんでいる。
政府当局からは外出制限が(引き続き)かかっており、巡回するパトカーも目立っているがーー少なからぬ逮捕者も出ていると仄聞するがーー必ずしも萎縮した空気は感じられない。
他方で、いたずらに弛緩しきっているわけでもない。談笑するご婦人たちも、芝生に腰かける若者たちも、それぞれ1.5メートル以上の間隔を順守している。
厳しすぎず、乱れすぎず。
慌てすぎず、緩めすぎず。
これは少しく失礼な話ではあるが、正直なところ、私はウィーンの人びとが緊急時にこうもうまく対処するとは予想していなかった。
オーストリアには覆面禁止法という(実質的な移民排除の)法律があって、公共の場でマスクを着けるのは禁止されている。しかし、コロナ対策の一環として、このたび「医師の診断書があればマスク着用可」と変節をした。
私が見たところ、往来でマスクを着けている人は全体の3割程度。この誰もが診断書を携行しているわけはないだろう、と私は邪推する。法治国家における現実とは、いつだって規制と運用のバランスで動いていくものだ。
(註:この数日後に、オーストリア政府は「電車内などでのマスク義務化」「スーパーでマスクを無料配布」などの措置を講じることになる。ローマ皇帝マルクス・アウレリウスが辺境のヴィンドボナ=ウィーンで落命してから千八百四十年、この市民たちは、いま初めてマスクで顔を覆う習慣を身につけたのである……!)
(コロナ逡巡日記⑥に続く)
ウィーンにおける人びとの動きの時系列変化 (出所:Google "COVID-19 Community Mobility Report", 2020年3月29日, 以下同様) |
東京における人びとの動きの時系列変化 |
ニューヨークにおける人びとの動きの時系列変化 |
3月23日(月)
23日(月)15時現在,新たにオーストリア国内で680名の新型コロナウイルス(COVID-19)感染の確定症例及び5名の死亡事例が報告されました(累計確定症例数は3,924名)。
(中略)
23日,オーストリア外務省から各国大使館に対し,無査証で当国に滞在をしている外国人への出国要請を含む通知がありました。該当箇所の内容は以下のとおりです。
(1)墺外務省は,内務省の発表に基づき,墺における無査証での90日間(当館注:日本人に対する6か月も含む)滞在中の者は,墺から出国するか,所管の州警察本部と滞在につき調整する必要がある旨通知する。
(2)当局による調整が不可能な場合(例えば,窓口の閉鎖により)は,訴追は行われず,遅れて出国した場合も今後の査証発給に悪影響はない旨保証する。事態が再び許せば,(当該外国人は)出国する必要がある。
(中略)
23日,オーストリア外務省から各国大使館に対し,無査証で当国に滞在をしている外国人への出国要請を含む通知がありました。該当箇所の内容は以下のとおりです。
(1)墺外務省は,内務省の発表に基づき,墺における無査証での90日間(当館注:日本人に対する6か月も含む)滞在中の者は,墺から出国するか,所管の州警察本部と滞在につき調整する必要がある旨通知する。
(2)当局による調整が不可能な場合(例えば,窓口の閉鎖により)は,訴追は行われず,遅れて出国した場合も今後の査証発給に悪影響はない旨保証する。事態が再び許せば,(当該外国人は)出国する必要がある。
引用:在オーストリア日本大使館「新型コロナウィルス関連情報:3月23日」
職場のリモートワーク環境が整ってきた。
わがセクションでは、各課員が毎朝メッセンジャーアプリSignalで生存報告を兼ねた挨拶をする決まりがある(SignalはMessengerやWhatsAppよりもセキュリティが堅牢との由)。
オンライン会議は、Skypeのときもあれば、Webexのときもある(Zoomもポピュラーだったが、数日後に情報漏洩リスクが報道されてから、私の周辺では下火になった)。いずれも便利だし、「上半身はジャケット」「下半身は短パン」という合成獣みたいな格好でも通用するのがおもしろい。ささやかな背徳感がスパイスになる。
懸念された子どもの闖入リスクは、カメラをOFFにしたり、「非発言時はマイクをミュートにして雑音を抑えるマナー」のおかげで、それほど心配のないことがわかった。まあ、闖入したら闖入したで、ご愛敬で済む話ではあるけれど。
3月24日(火)
24日(火)15時現在,新たにオーストリア国内で952名の新型コロナウイルス(COVID-19)感染の確定症例及び7名の死亡事例が報告されました(累計確定症例数は4,876名)。
24日,ANAのウィーン-羽田直行便が3月29日(日)から4月24日(金)まで運休する旨の発表がありました。
24日,ANAのウィーン-羽田直行便が3月29日(日)から4月24日(金)まで運休する旨の発表がありました。
引用:在オーストリア日本大使館「新型コロナウィルス関連情報:3月24日」
ANAの直行便がついにお休みとなる。友人のEさんは来月初旬の帰任予定だったが、あわてて前倒しでチケットを取っていた。
ウィーン空港の様子(Eさん撮影:以下2枚も同様) |
1日に6便しか飛ばない、空前絶後のフライトスケジュール |
空席が目立つ機内。ANAがんばれ |
飛行機に関しては、ひとつ朗報があった。Wizz Airから連絡があって、予約済みのチケットが返金可能とわかったのだ。
Wizz Airから提示されたオプションは、「①購入額120%相当のWizz Airポイント(2年で失効)」または「②100%相当の現金」の2つ。すばらしい。LCC(格安航空会社)にしては親切すぎるくらいだ。
すこし悩んで、「②」を選ぶ。なぜなら、今夏にはウィーンでの任期が満了し、次の勤務地はおそらく東京であるから。
2018年1月1日に開始した拙ブログも、いよいよ最終コーナーにさしかかってきた。
3月25日(水)
25日(水)15時現在,新たにオーストリア国内で684名の新型コロナウイルス(COVID-19)感染の確定症例及び3名の死亡事例が報告されました(累計確定症例数は5,560名)。
(中略)
23日付け領事メールでお知らせしたオーストリア外務省から各国大使館への通知内容が以下の「」内のとおり修正されました。
(1)墺外務省は,内務省の発表に基づき,墺における無査証での90日間(当館注:日本人に対する6か月も含む)滞在中の者は,「適時に(rechtzeitig)」墺から出国するか,「国内当局(Inlandsbehoerden)=警察・在留権申請当局等」と滞在につき調整する必要がある旨通知する。
(2)当局による調整が不可能な場合(例えば,窓口の閉鎖により)は,訴追は行われず,遅れて出国した場合も今後の査証発給に悪影響はない旨保証する。事態が再び許せば,(当該外国人は)出国する必要がある。
この修正により,今すぐに出国を要請されてはいないことが確認できましたので,今後の滞在については状況を注視しながらご判断ください。
(中略)
23日付け領事メールでお知らせしたオーストリア外務省から各国大使館への通知内容が以下の「」内のとおり修正されました。
(1)墺外務省は,内務省の発表に基づき,墺における無査証での90日間(当館注:日本人に対する6か月も含む)滞在中の者は,「適時に(rechtzeitig)」墺から出国するか,「国内当局(Inlandsbehoerden)=警察・在留権申請当局等」と滞在につき調整する必要がある旨通知する。
(2)当局による調整が不可能な場合(例えば,窓口の閉鎖により)は,訴追は行われず,遅れて出国した場合も今後の査証発給に悪影響はない旨保証する。事態が再び許せば,(当該外国人は)出国する必要がある。
この修正により,今すぐに出国を要請されてはいないことが確認できましたので,今後の滞在については状況を注視しながらご判断ください。
引用:在オーストリア日本大使館「新型コロナウィルス関連情報:3月25日」
ウィーンから日本への引っ越し準備を進める。私の所属する国際機関が費用を負担してくれるのはありがたいが、最低3社から相見積もりをする必要がある。その候補も担当部署が指定するので、こちらが日通を選んだりはできない。
コロナウィルスの影響で見積もり作業の実現可能性が懸念されたが、どの会社もWhatsAppなどのリモートで対応可能との由。なるほど、テキストと音声と画像と動画がシェアできれば、対面をせずとも物事は進む。
これと同じような発想で、日本の不動産屋さんで「リモート内覧」とか「大家さんとのリモート面談」とかに対応してくれるところがあれば、これは海外居住者の潜在ニーズを大いに満たすのではないか。
いや、日本の不動産業界がコンサバティブであるのは承知しているが、そうであればこそ、こういったサービス付与で一気に差別化できるようにも思う。どこかに意欲的な業者はいらっしゃらないものか。
3月26日(木)
26日(木)15時現在,新たにオーストリア国内で838名の新型コロナウイルス(COVID-19)感染の確定症例及び18名の死亡事例が報告されました(累計確定症例数は6,398名)。
引用:在オーストリア日本大使館「新型コロナウィルス関連情報:3月26日」
子どもたちの自宅待機も早や2週間である。
3歳児が通う幼稚園は、厳密には閉鎖していないのだが、保護者に対して「どうしても家に留めおけない事情がある場合のみ登校可」のお触れがあり、ここまでずっと「登校者ゼロ」の状態を保っている。
6歳児が通う小学校は、政府要請により公式に閉鎖中。「いまのところ学校関係者の感染はゼロ」との連絡がある。(私の職場ビルからは6名の感染者が出ている)
小学校からはiPadと「自習キット」が支給されて、平日にオンラインで課題が届く。Seesawというアプリを通じて提出するのだが、これがなかなかに侮れない。
たとえば、「表面張力」の回では、
- お椀にたっぷり水を入れる。
- 水面にクリップを乗せる。 ⇒ 沈む。
- キッチンペーパーを四角に切り抜いて、水面に乗せる。⇒ 浮かぶ。
- その上にクリップを乗せる。 ⇒ ペーパーは沈み、クリップは浮く。
- どんな器具を使ったか
- どんな手順で実験をしたか
- なぜこの結果になったか(=2.と4.の結果が異なる理由は?)
オンライン学習とはどういうものか、はじめて実感できたような気がする。
3月27日(金)
27日(金)15時現在,新たにオーストリア国内で1,001名の新型コロナウイルス(COVID-19)感染の確定症例及び9名の死亡事例が報告されました(累計確定症例数は7,399名)。
(中略)
なお,アンショーバー保健相は昨日及び本日の記者会見で以下のような内容を述べています。
・我々は感染者数の増加に合わせて,病院の受入能力を増やしている。目下,病院のベット数は十分にある。(26日記者会見)
・感染者数の増加率は20%を下回り,外出・開店規制の効果が表れ始めていると言えるが,より明確に判断するにはこの週末の動きを見る必要がある。
引き続き現状の措置に従って規制を守って欲しい。(27日記者会見)
(中略)
なお,アンショーバー保健相は昨日及び本日の記者会見で以下のような内容を述べています。
・我々は感染者数の増加に合わせて,病院の受入能力を増やしている。目下,病院のベット数は十分にある。(26日記者会見)
・感染者数の増加率は20%を下回り,外出・開店規制の効果が表れ始めていると言えるが,より明確に判断するにはこの週末の動きを見る必要がある。
引き続き現状の措置に従って規制を守って欲しい。(27日記者会見)
引用:在オーストリア日本大使館「新型コロナウィルス関連情報:3月27日」
今週ぶんの仕事を大過なく終え、ボスニア・ヘルツェゴヴィナの記事も脱稿した。よし。YouTubeばかり見ている息子たちを、買い物ついでに外出させる頃合いだ。
「行き先を決めずに電車に乗る」とは拙ブログ初期の記事名だが、最近そのインセンティブが増している。原点回帰というべきか。
この日は路面電車71番に乗って、40分くらいかけて終点のKaiserebersdorf駅に行く。目的みたいなものは何もない。いつもと変わらぬスタイルだ。
路面電車にはほとんど人がいない(平日でも休日ダイヤ程度に減便されている) |
児童公園は(政府の制限どおり)立ち入り禁止になっている |
スーパーマーケットは営業していた |
客足は少なく、物資は豊かだ |
トイレットペーパーもふんだんにある |
就寝前に、のがみもゆこ「メロウ・リバー」を読む(Kindleで0円)。これはおそらく妙齢の女性に向けられた漫画であるが、中年男性である私にも、泉質の豊かな露天風呂のような魅力がある。そこにずうっと浸かっていたくなるのだ。
つげ義春の漫画をひさしぶりに読みたくなる。でもウィーンにはない。悲しい。
3月28日(土)
28日(土)15時現在,新たにオーストリア国内で596名の新型コロナウイルス(COVID-19)感染の確定症例及び10名の死亡事例が報告されました(累計確定症例数は7,995名)。
引用:在オーストリア日本大使館「新型コロナウィルス関連情報:3月28日」
携帯電話からWhatsAppの通知が鳴りやまない。これは、どういうことか。
いつのまにか、ブードゥー・ジャズのグループに入れられていたのだ。
今年の初めに関係者から連絡を受けたことはあるけれど、それだけのご縁で、まさかいきなりインナー・グループに組み入れられるとは思わなかった。現在57人のグループで、私以外の参加者は全員が黒人である。次回の演奏会のロジスティクスなどのやり取りが、フランス語でスピーディーに進められていく。
さらには、これはWhatsAppの設定のせいだろうか、私の携帯電話にすごい勢いで参加者の自撮り画像みたいなのが溜まっていく。端的に言って、わけのわからない状況である。
画像のなかには、マスクを着用している姿もあった。ベナン共和国にも、コロナウィルスの影響が及んでいるのだ。
3月29日(日)
29日(日)15時現在,新たにオーストリア国内で541名の新型コロナウイルス(COVID-19)感染の確定症例及び18名の死亡事例が報告されました(累計確定症例数は8,536名(内死亡数:86名,治癒数:479名))。
引用:在オーストリア日本大使館「新型コロナウィルス関連情報:3月29日」
子どもたちと路面電車2番に乗って、終点のDornbach駅に行く。
風通しのよいウィーンの郊外。ここも初めて降りる場所である。
犬の散歩をたのしむ人もあり、子どもたちと遊ぶ家族もあり、各々が気ままに晴天の吉日をたのしんでいる。
政府当局からは外出制限が(引き続き)かかっており、巡回するパトカーも目立っているがーー少なからぬ逮捕者も出ていると仄聞するがーー必ずしも萎縮した空気は感じられない。
他方で、いたずらに弛緩しきっているわけでもない。談笑するご婦人たちも、芝生に腰かける若者たちも、それぞれ1.5メートル以上の間隔を順守している。
厳しすぎず、乱れすぎず。
慌てすぎず、緩めすぎず。
これは少しく失礼な話ではあるが、正直なところ、私はウィーンの人びとが緊急時にこうもうまく対処するとは予想していなかった。
オーストリアには覆面禁止法という(実質的な移民排除の)法律があって、公共の場でマスクを着けるのは禁止されている。しかし、コロナ対策の一環として、このたび「医師の診断書があればマスク着用可」と変節をした。
私が見たところ、往来でマスクを着けている人は全体の3割程度。この誰もが診断書を携行しているわけはないだろう、と私は邪推する。法治国家における現実とは、いつだって規制と運用のバランスで動いていくものだ。
(註:この数日後に、オーストリア政府は「電車内などでのマスク義務化」「スーパーでマスクを無料配布」などの措置を講じることになる。ローマ皇帝マルクス・アウレリウスが辺境のヴィンドボナ=ウィーンで落命してから千八百四十年、この市民たちは、いま初めてマスクで顔を覆う習慣を身につけたのである……!)
(コロナ逡巡日記⑥に続く)
コメント
ご栄転おめでとうございます(海外滞在記が減りそうなのは残念ですが)。
東京に引っ越しされるとのことで同世代の日本国内引っ越し経験2桁の経験(日本の転勤文化万歳(T_T))では、URがオススメですのでよろしければ参考にしていただければ。※全然空室ございませんが。
https://www.ur-net.go.jp/chintai/sp/kanto/tokyo/result/?skcs=123&area=04&skcs=120&area=05&skcs=119&tdfk=13&todofuken=tokyo
オーストリアから東京への引越録も楽しみにしております。
このブログはウィーン生活の終了とともに閉じる予定ですが、これまでご愛顧いただき感謝です。
UR機構には私の古い知己が勤めていることもあり、一度は利用してみたいと思っておりますが、まだ実現していません。
コロナ禍でAirbnb等が底値になっているので、向こう1年くらいは住居を点々として暮らそうかと思いましたが、子どもの学校などの関係でそれも叶いません(当たり前か)。難しいものです。