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棒を持った人は、ショッピングモールに入れない(ニース、モナコ)

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「フランスという国はね、誰からも愛されていないんだよ」 と言ったのは、同僚のフランス人のTさんである。  ワールドカップの決勝戦を直前に控えた日のランチで、彼がこの画像を見せてくれた。 引用: Polemical Polish memes  世界中の国はおろか、太陽系の惑星まで、みな一様にクロアチアを応援している。  そしてついには、 引用: Polemical Polish memes  神さまもクロアチア支持を表明された。  みんな、フランスがきらいなのである。 ふかふかの腐葉土のように積もっている これは、もちろんジョークである。  どちらかといえば趣味の悪いジョークであるが(セルビアなどは反クロアチアだろうし)、みんな腹の底ではこういう危ないジョークがだいすきだ。これは、私が国際機関で学んだことのひとつである。  フランスの人たちは(と、一般論のように語るべきではないと承知しつつ、私が知己を得たn=20程度のサンプル数でいえば)、自虐のみならず、他の国をばかにするのもだいすきだ。 「ドイツ? ああ、あの蛮族たちの国ねぇ」  悪口のスケールが、ローマ帝国時代にまで及んでいる。  日本では京都の人たちに似たものを感じるが(なにしろ 「この前の戦争」 が応仁の乱のことだったりするから)、ヨーロッパでは全域にわたって歴史と文化がふかふかの腐葉土のように積もっていて、そのなかでも飛びぬけて栄養満点の土壌がフランスなのである。  たとえば、文学ひとつとっても、 ラブレー がいて、 ユーゴー がいて、 サド がいて、 セリーヌ がいて、 バルザック がいて、 スタンダール がいて、 プルースト がいて、 クノー がいて、 カミュ がいる。糞尿から前衛まで。この振れ幅の広さはただごとではない。 はじめてのフランス訪問は、パリ、2015年。自撮り棒が人気でびっくりした 出張で来ていたが、上司を放置して 「バルザックの家」 に行った パリも悪くなかったが、その後に訪れた南仏の街・トゥールーズは最高だった 四半期に一度は海を見る必要がある そんなわけで、ウィーンに住んでからも、フランスにはどこかで必ず訪れたいと思っていた。  最初に想定していたのは、 シュヴ

ヤムチャはすぐ死ぬ、という世界の共通理解

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「 おっぱい って、なんですか」と私の奥さんに質問をしたのは、アウグストゥスくん(仮名)である。  外形的には、かなりの問題発言だ。出るところに出れば、懲戒免職ものだろう。  けれどもアウグストゥスくんは、オーストリア人の高校生である。息子が通う幼稚園では、園長先生の長男にあたる彼もときどきお手伝いをしている(させられている)のだ。  15歳の彼の口から発せられた質問は、だからセクハラ的なそれではない。 「ワンパンマン」 という漫画の主人公・サイタマが着用するパーカーに記された「OPPAI」の意味を、私の妻に素朴に問うたのだ。  その回答を妻から聞いたアウグストゥスくんは、赤面して謝ったという。 商品化もされたOPPAIパーカー(引用:ONE 「ワンパンマン」 16撃目) 「バイブル」としてのドラゴンボール オーストリアの11月11日は 聖マーティンの日 という祝日で、我が幼稚園でもキリスト教の故事にちなんだイベントがある。  乱暴に要約すると、先生と親子が集まって、聖マーティン(に扮装した職員)からもらったパンを皆で分け合い、それからレストランでガチョウ料理を食べる。宗教観を抜きにしても、なかなかたのしい催しである。  この食事会で、例のアウグストゥスくんとはじめて言葉を交わす機会があった。これまでは専ら奥さんを通じた伝聞で、同氏が日本の漫画オタク(geek)であるとは知っていたが、逆もまた然りであったようで、私の姿を見るや向こうから距離を詰めてきた。  でも口火を切ったのは私の方だ。  「ドラゴンボールの日本語版を ウィーン日本人学校 のバザーで買ったんだけど、これを君にプレゼントするよ」  「えっ・・・ええっ!!!!!!?」  初手から大興奮のアウグストゥスくん。  ビックリマークの数も、思わずドラゴンボールみたいになってしまった。 「ドラゴンボールZ」の「Z」はアニメ版だけの呼称、という解説を必要とした  アウグストゥスくんは、オーストリアのほとんどの高校生がそうであるように、日本語の読み書きがまったくできない。  しかし、前途洋々たる漫画オタクとしての彼は、ドラゴンボールの原書(つまり日本語版)に触れることを長らく切望していて、それはちょうどキリスト教の神学者がヘブライ語