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コロナ逡巡日記② (3月2日~3月8日):不穏な空気に包まれる

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(本稿は、 コロナ逡巡日記① の続きです) 3月2日(月)  2日(月),新たにオーストリア国内で2名(ウィーン市1名,ザルツブルク州1名)の新型コロナウイルス(COVID-19)感染の確定症例が報告されました(累計確定症例数は16名)。 引用:在オーストリア日本大使館「新型コロナウィルス関連情報:3月2日」 インドネシア出張を終えての初出勤。  朝の定例会議で課員に出張報告をする。今回はわりに目に見える進捗があったので、ブリーフィングも気楽である。逆にめぼしい成果を得られなかったときには、fruitful discussionとかproactive participantsとか、定量化できない言葉が増えてくる。こういうのは日本語でも英語でも変わらない。  子持ちの同僚と、今日&明日の学校閉鎖について雑談をする。「明後日から再開してくれると助かるんだけどね」「まいったねぇ」「うちは娘と一緒に出勤するしかないかも」みたいな話。わが職場では、みんな気軽に子どもをオフィスに連れてくる(各職員には個室が与えられている)。この時点では、職場ビルの閉鎖を想定する同僚は少なかった。  この日の晩は、私が幹事を務める飲み会があったが、偉い人から「リスク回避のために止めておこう」と鶴の一声をいただく。残念だが適切な判断だろう。ギリシャ料理屋「Ouzeri Bistro Ellas」の予約もキャンセルだ。 3月3日(火)  3日,フーバー・ウィーン市新型コロナウィルス関連危機司令部広報担当官の発表によると,伊滞在後ウィーンに戻った夫婦のウイルス感染が確認されました。両名とも軽症のため自宅隔離となったとのことです。  3日,ウィーン市の弁護士事務所の発表によると,同市における最初の確定症例となった72才の弁護士事務所で新たに3名(弁護士2名,研修生1名)のウイルス感染が確認されました。    3日,ポーライ・墺連邦内務省タスクフォース報道官の発表によると,コールノイブルク地区居住の女性1名のウイルス感染が確認され,軽症のため自宅隔離となったとのことです。この女性は同地区で既に感染が確認されていると接触があった模様です。 引用:在オーストリア日本大使館「新型コロナウィルス関連情報:3月3日」 今日も6歳の息子は自宅待

コロナ逡巡日記① (2月25日~3月1日):国内初の感染者が出る

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新型コロナウィルス(COVID-19)の感染が世界中に広がっている。  私はこれまで、本件を拙ブログで取り上げる必要性を感じなかった。しかるべき専門家たちが情報発信をされており、そこにあえて(医療の専門知識を持たない私が)後追いするのは、ProsよりもConsのほうが大きいように思えたのだ。  そうした意見は、しかしながら、最近になって反転してきた。  今般の事案については、後世の人たちから「ひとつの時代の区切り」と判断されるかもしれない、と思うようになった。ゆえに、いまこの時期にたまたまウィーンに暮らしている私が、自らの経験と行動を、考察と心象を、主観と客観を、衒いのない形で書き記しておくことには意義があるのではないか。かつて 山田風太郎「戦中派不戦日記」 や 古川ロッパ昭和日記 を愛読していた私は、そう考えるようになったのだ。  というわけで、これからしばらく 「コロナ逡巡日記」 と題する不定期の雑文をしたためる。オーストリア国内初の感染症例が報告された2020年2月25日を開始日とするが、執筆者は3月27日時点から記憶を遡って記すため、若干の事実誤認などがある可能性をお含みおきありたい(お気づきになった読者諸賢におかれては、遠慮なくご指摘ありたい)。 出所: 在オーストリア日本国大使館 「新型コロナウィルス関連情報」より筆者作成(以下同) 2月25日(火) 在オーストリア日本国大使館から、 「オーストリア国内で2名の新型コロナウイルス(COVID-19)感染の確定症例が報告されました。」 との一斉メールを受信する。  ついに来たか、と思う。  この週、私はインドネシアに出張していた。ウィーンを発つ直前に 「インドネシア政府が感染疑いのある日本人を入国拒否した」 との報道があって緊張感を高めていたところだったが、いよいよオーストリアにも感染者が現れたのだ。  今月25日(火),プラッター・チロル州首相は記者会見を開き,チロル州で2人が新型コロナウィルス(COVID-19)に感染したことが確認された旨発表しました。  プラッター首相によると,2人はインスブルック市に居住するイタリア・ロンバルディア州出身のイタリア人(2人とも24歳)で,感染の症状があったために自ら当局に申し出た後,検査で陽性が判明しま

バカにゆられて夕陽は沈む(コートジボワール)

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デイリーポータルZで、 「バカをつかまえろ」 という旅行記を書いた。  あの記事では、コートジボワールの乗り物を紹介する体裁をとった。へちまを育てるときに支柱を立てるように、なにかひとつ軸を据えないと収拾がつかない恐れがあったからだ。  とはいえ、 電車 、 バス 、 バカ のほかにも公共の乗り物は存在するので、あの稿が(乗り物にフォーカスしたにせよ)いささか片手落ちとの自覚はある。たとえば、アビジャンの潟を走る 水上バス には、「正規」と「非正規」が奇妙なかたちで共存しており、駅の近くには見棄てられた漁民たちのスラムなどもあるらしい。  しかし、誰にも平等な時間の制約がそこにはあった( ヤムスクロ と グラン・バッサム がそれぞれ一日がかりの旅だったのも大きい)。アビジャン郊外にあるという「ものすごく寂しい動物園」にも、残念ながら今回は行けなかった。  ご関心のある読者におかれては、リスクと好奇心を天秤にかけたうえで、訪問を検討されてみてはいかがだろう。  以下、まとまりのないアウトテイクスとして、写真に短文を添える形で現地の空気をお伝えしたい。この先もずっと、太陽と生命の熱波を浴びつづける宿命を持った土地の空気を。 アビジャンの人口は約400万人とのことだが、体感ではその倍くらいはいそうだ。出生しても役所に届けないケースが多いのではないか。( トルクメニスタン と好対照な気がした) 西アフリカ地域にはマラリア感染のリスクがある。アビジャン在住者のアドバイスを受けて、高濃度(DEET 30%)の蚊よけスプレーを現地薬局で買った ブロックに色を塗って三角コーンの代わりとしていた(地方でも見かけた) 路上のキオスクは品揃え豊かで、「TIME」「Harvard Business Review」もあればポルノ雑誌もある(ポルノの対象はなぜか白人女性が多かった) 致死的な病の兆候がみられる野良犬。こういうのに噛みつかれると、人生の終わりが急ピッチでやってくる アビジャン市街の サンパウロ大聖堂 。イタリア人の建築家(Aldo Spirito)によるモダンな設計 訪問時にちょうどミサをやっていた。日陰を求めて人びとが集まっていた