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著者解題【2019年】

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このブログはまもなく終了となるが、その前に、2019年に公開した記事(全34本)を解説する試みを果たしたい。これは 「著者解題【2018年】」 の続篇である。  前回と同様に、付き合いの長い読者に向かって、ひっそりと種明かしをするような心持ちでやっていきたい。 1.  壊されなかったのは偶然だった(クラクフ) https://wienandme.blogspot.com/2019/01/blog-post.html  2019年の1本目。ポーランドの古都クラクフの家族旅行記。  この頃は、旅行ペースが執筆ペースを上回って、忘れないうちに原稿を完成しないとならないとの焦りがあった。  いまにして思えば、それはまったく無用な焦りだった。なぜなら、たしかな材料さえ揃っていれば、数か月程度のインターバルは、むしろ記憶の自然な浮き沈み(=無意識の力を借りた題材の取捨選択)を促すための適切な熟成期間となるからだ。  クラクフは訪れる価値のある、静かで美しい町だった。その1年後には北極圏に向かう旅のトランジットとして、同じポーランドの グダニスク に出かけた 。この土地は第一次世界大戦後のある時期に、どの国にも属さない 自由都市ダンツィヒ と呼ばれていた。  西と東の列強に翻弄されつづけたポーランドは、私がウィーン滞在中に旅行したなかで最も心惹かれた国のひとつだ。 グダニスクの旧市街 2.  ナチスドイツと東京メトロが共存する空間(ウィーン交通博物館) https://wienandme.blogspot.com/2019/01/blog-post_5.html  ウィーン郊外にある交通博物館を子どもたちと訪問したときの記録。  ウィーンの観光名所の紹介は、基本的に拙ブログの射程外としていたのだが(ほかにも多くの適任者がいるだろうから)、この交通博物館にはなにしろ私も息子たちも大興奮であった。そのときの心の動きを封じ込めるようにして、すっと一息に書き上げた。自分でも気に入っている記事である。 新型コロナウィルスの影響で、路線図の布マスクが新発売となった 3.  これが人生初の一時帰国だ(東京) https://wienandme.blogspot...

完成しなかったネタ案を、ここに記して成仏させよう

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デイリーポータルZ に掲載予定の次回記事 「存在しないことになっている水上スラムに行く」 をもって、私のライター活動は休止となる。  これは当初から(私の意向で)計画されていたことだ。いつか再開できたら嬉しいけれど、月1-2本のペースで原稿を書き上げる生活は、ひとまずは今月で区切りとなる。  持てる力を出しきって、我が生涯に一片の悔いなし。そう言い切れたらカッコいいのだが、残念ながらそうではない。「準備不足などで完成に至らなかったネタ」がいくつかある。  拙ブログについても、 サラエボ 、 オフリド 、 ロンドン などの旅行記を書けずじまいだった。それはもう放念するしかない。ここではデイリーポータルZ向けに考えていたネタ帳の中身を公開したい。「くだらないネタばっかりだな」と笑ってくれたら本望だ。 会計前の「つまみ食い」はどこまで許されるか ジョージア旅行中 に、商店でレジ前の行列に並んでいたお爺ちゃんが、やおらコーラを飲み干して、その空き缶をお会計していた。堂々としたふるまいだった。店員さんも、それを普通に受け入れていた。 そういえばウィーンのスーパーでも、ご婦人がレジに通す前にクロワッサンを齧ったりしていた。 こうした行為はどこまで許されるのか。クロワッサンの95%を食べたら怒られるのか。70%ではどうか。30%ではどうか。これを実験したい。レジ担当の人にインタビューもしてみたい。 イタリア、スペイン、インド、中国でも許されるのか。ロシア、ベラルーシ、アゼルバイジャン、カザフスタンではどうか。ブラジル、ボリビア、キューバではどうか。日本でも、大阪の一部エリアだったら許されるのではないか(※個人の意見です)。 100ヵ国くらいで実験をして、色分けした地図を作ってみたらどうなるか。キリスト教、イスラム教、仏教などの影響はそこに見られるか。 <コメント>  友人のSさん( かつて三賢人のひとりとして寄稿いただいた方 )と痛飲していたとき、原型となるアイデアをいただいた。そのあとで別の知己に話してもウケがよく、これは比較文化論のテーマとしても発展しうるのではないか、などと妄想はふくらむばかりであった。  このネタには難点がひとつある。「許されなかったケース」の実験結果として、現行犯逮捕の可能性があることだ。 環境音Y...

著者解題【2018年】

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今回はちょっと趣向を変えて、2018年に書いた記事(全41本)を解題してみたい。  いつもの舞台には上がらずに、楽屋裏かどこかで温かい煎茶でも入れながら、常連の読者にぽつぽつと語りかけるようなイメージだ。  「インターネット上にまとまった文章を発表してみたい」あるいは「すでに発表している」という方には、ひとつの事例として参考になるかもしれない。参考にならないかもしれない。そのどちらかであることは間違いない。  前口上はともかく、やってみよう。なにしろ41本である。 1.  はじめに https://wienandme.blogspot.com/2018/01/blog-post.html  記念すべき1本目。  はじめにブログの性格と終了条件を宣言するのは前作 「バークレーと私」 と同じ。年明けのタイミングで開始しているのも同様だ。こうすることで、読者との間にわずかながら緊張感が生まれる・・・かどうかはわからないが、それが私の好みなのだ。  ウィーンに来たばかりの頃には、ブログをやるつもりはまったくなかった。少なからぬ時間と労力を持っていかれると知っていたからだ。そうした傾向の行きつく先には、偉大なる家庭不和がもたらされる(かもしれない)。  でも異国の地で半年ばかり暮らしていると、掃除を怠った部屋の隅っこにホコリが積もってくるように、書きたいことがじわじわと溜まってくる。そういうものを発信する場所として、それもフローではなくストックの形で貯められる場所として、私にはブログが念頭にあった。 「ウィーン滞在記」と「子連れ旅行記」の、いわばハイブリッドのような内容になる予定です。   このように明言することで、想定される読者層はかなり絞られてしまうかもしれない。でもPV(ページビュー:閲覧回数)だけを追うのではなく、 「10年後にも読むに堪えうる文章を書くこと 」を目指すように心がけた。これは、2012年の記事 「人生は手持ちのカードで戦っていくしかない」 がいまでも熱心に読まれているという、(小さな)成功体験に拠っている。  とはいえ、子連れで外国に滞在するさまをつづった文章は、すでに世の中にあふれている。私はどのようにして独創性を打ち出せばよいか。 「手持ちのカード」 内の一節を用いるなら、 「世界中...